成功体験の積み重ねが自信になる

2度目のアンガーマネジメント入門講座を受講されたある女性の話です。
(※掲載の許可をいただきました。)

「受講した時に抱えていた怒りは、あれからすぐに気にならなくなりました。でも、まだ怖いんです。私、またいつか怒鳴ってしまうのではないか。取り返しのつかないことを言ってしまうのではないかって。怖くて仕方がないんです。」

2つ、ご提案しました。

1つは、グラウンディング(地に足をつける)です。まだ起きていないこと、未来を想像していらっしゃるので、まず「今」に意識を向けましょうと申し上げました。また、「怖い」は、第一次感情です。第一次感情が増えると怒りを感じやすくなります。恐怖や不安を感じたら、グラウンディングをしたり、自分が笑顔になるようなものを見たり、聞いたり、イメージしてたりして、頭の中から恐怖や不安を追い出しましょうとお伝えしました。

2つめは、アンガーマネジメントを続けること。イラッとした時、入門講座でご紹介したアンガーマネジメントのテクニックをぜひ実践してくださいと申し上げました。なぜなら、

「カッとなっても怒鳴らなかった」
「イライラしたけど、すぐ気分転換できた」
「以前なら激怒していたところを軽くスルーできた」

こんな一つ一つの積み重ねが、「何があっても、私は大丈夫」という自信になるからです。

実は私も、「いつかキレて取り返しのつかないことをしてしまうのではないか」と不安を感じていたことがありました。

でも、今はもう不安はありません。以前なら激怒していたであろう状況で、そもそも怒りを感じないのです。逆に、怒る必要があると判断した時には、躊躇なく自己主張できるようになりました。

成功体験の積み重ねが自信につながります。ぜひ、アンガーマネジメントを実践してください。入門講座の内容で十分です。毎日、毎日、ぜひ取り組んでみてください。


まず自分と向き合うことから

「子どもが言うことをきかない。」
「親の言うことを聞かせるには、どう言えば良いか。」

よくいただくご質問です。子を案じるからこそ、親である自分の言うことを聞かせたい。その気持ちは、私もとてもよくわかります。

しかし、アンガーマネジメントは、他人を変えません。他人ではなく、自分が変わることをめざします。

事例を1つご紹介します。小学2年生の男の子のお母さまの例です。

「休み時間や放課後はサッカーなどをしてもっとお友達と活発に遊んでほしいと思っているのに、息子は読書ばかり。もっと友達と遊べと何度も言うのだが、まるで言うことをきかない。一人で帰ってくる息子、遊びに行かず読書をしている息子を見るとイライラして仕方がない。」

こんな時は、まず自分と向き合います。なぜイライラしてしまうのか。

少し時間はかかりましたが、「友達のいない子になったら心配だから」の、「心配」という言葉から紐解くことができました。

お母さまも、実は集団が苦手で、本当は一人でいたかったのだそうです。しかし、一人でいると先生が自分をかわいそうがって、「〇〇ちゃん(お母さまの名前)、一人でかわいそうだから誰か一緒に遊んであげて」と周りの子に声をかけるので、それが嫌で、以来、必ず誰かと一緒にいるように努力したそうです。

「私は別に一人でも良かったんです。別に困ることはなかったし。でも、かわいそうと言われて、自分はかわいそうなんだ、一人でいてはいけないんだと思うようになったのかもしれません。考えてみたら、男の子だから活発に外で遊ぶべきとか、子どもは友達といるべきとか、そんなことは私の勝手なこだわりなんですよね。もしかすると、私に何を言われても気にせず我が道を行く、本を読み続ける息子が羨ましくてイライラしていたのかもしれません。」

それ以降、お母さまは、自然と、外で遊べとも本を読むなとも言わなくなったそうです。(ただ、目が悪くならないよう、時々、窓の外、遠くの景色を見るように声をかけるだけにしたそうです。)「驚くほどイライラすることがなくなりました」とおっしゃっていました。すると、お子さんにも変化が現れて、時々、友達を連れてくるようにもなったそうです。

不思議、とおっしゃっていましたが、不思議なことではありません。お母さまが子どもの頃に先生から言われた「一人ではかわいそう」という押し付けられた価値観に縛られていたことに気づいたから、お母さまが変わったから、お子さんも変わっただけなのです。

自分が変わると周りが変わる。

アンガーマネジメントでは、周りではなく、自分が変わることを目指します。


言葉から気づく

息子が、私の部屋のドアをノックもせずに開けたときのこと。

「ノックしてから入ってきてよ。ママ、いつもそうしてるでしょ。」

つい抗議めいた口調でそう言ってしまってから気づきました。「ママ、いつもそうしてるでしょ?」は余計なんですよね。必要なことは、今こうしてほしい、次からこうしてほしいとリクエストすること。だから、シンプルに「ドアを開ける時はノックして」そう言うだけで良かったのです。

実は、私は息子の部屋に入る時、必ずそうしています。親の私がそうしているのだから、そんな姿を見ている息子も【当然】そうするだろう、と思い込んでいました。

怖いですね。これは完全に思い込みです。「俺の背中を見て学べ」的な思考です。教わらなければ分からないことだってあります。

また、よく思い返してみると、息子は日頃、ドアを開ける前に「今、いい?」と声をかけてくれています。今回の件は息子にとって大切な用事だったので、声をかける余裕がなかったのでしょう。(あとで、非常に重要な書類を私に渡そうとしていたことがわかりました。)

「ママ、いつもそうしてるでしょ?」

この言葉の中に、「息子なら、私がやっていることを、言われなくてもするはず(あるいは、するべき)」が透けて見えます。

私がやっているのだから、誰もがするはず。
しきゃいけない。
して当然。
するのが常識。
普通するよね。

この思い込みが、怒りの正体です。アンガーマネジメントを知る前の私なら、「そんなことも言われなきゃわからないのかっ!」などと人格攻撃に走っていたでしょう。しかも、日ごろはきちんとできていることも思い出せずにいたのです。恐ろしいことです。

発した言葉から、怒りの正体に気づけることもあります。「あ。私、今怒ってるな」そう思ったら、ぜひ自分の言葉をふりかえってみてください。


6秒で逆に怒りが強くなる理由

先日、あるインターネットの掲示板で「6秒待ったら逆に怒りが強くなった」という書き込みを見かけました。

アンガーマネジメントの6秒ルールは「反射」を防ぐことが目的なので、ついカッとなって怒鳴ったり、叩いたりしなければそれでOKなのですが、それでは納得できない方が多いようです。そこで今回は、6秒で逆に怒りが強くなる理由について、書いてみたいと思います。

6秒待ったことで、逆に怒りが強くなる理由。それは、頭の中で怒り続けているからです。

表面上は平静を装っていても、頭の中では「ありえない」「信じられない」「考えられない」「普通じゃない」「非常識」など、相手を責める言葉でいっぱいではないでしょうか。これでは、怒りの炎に、自分で油を注いで炎上させているようなものです。

誤解されている方が多いのですが、「6秒待つ」とは、6秒我慢する、6秒抑える、ではありません。「6秒間、怒りを頭から追い出す」です。

目の前にムカつくヤツがいるのに、どうやって追い出すんだ!と、たった今、お怒りの方もいらっしゃると思います。が、頭から怒りを追い出すことは、できます。人間の脳が一度に処理できる情報量には、限りがあるからです。

仮に、激昂するほどの強い怒りに襲われたとします。しかし、もしその時、地震などで自分の身体が大きく揺れたら、どうですか? 一瞬、はっ、としませんか?「あれ?地震?」「あれ?まだ揺れてる?」と状況を見極めようと集中しませんか? その瞬間は、自分の身を守ることが最重要課題になり、怒りは後回しになるのではないでしょうか。

アンガーマネジメントの6秒テクニックを使うと、「6秒間、怒りを頭から追い出す」ことができます。スケールテクニック、コーピングマントラなどなど。

6秒経過すると、脳内の「前頭葉」と呼ばれる「冷静な判断」や「論理的な思考」を行う部位が活動を始め、この怒りにどう対処すべきか冷静に考えられるようになります。前頭葉が働き始めたら「よし、ここは大きな声で主張しておこう」とか、「今回は見逃そう」「次からこうしてほしいと伝えよう」など、怒りをどう表現するか、選択することができます。

つまり、怒りにまかせて怒るのではなく、自分が「どう怒るか」を決めて「怒る」ことができるのです。そして、それこそがアンガーマネジメントのめざすところでもあるのです。

6秒で逆に怒りが強くなるのは、待っている間に怒っていることを考え続けてしまうから。それを防ぐために、怒りを頭から追い出すアンガーマネジメントのテクニックが有効です。


書籍紹介「怒らない伝え方」

アンガーマネジメント研修で、必ずご紹介しているのが、「アンガーマネジメント 怒らない伝え方」です。日本アンガーマネジメント協会の戸田久実理事が執筆されています。

自分の事例を探して読むのではなく、ざっとでも良いので、最初から最後まで目を通してみてください。怒っていることを伝える時に必要なのは、決して、うまい言い回しや言葉巧みな表現ではないことに、気づけるのではないかと思います。怒っていることをどう伝えるために必要なものは何か、上手な怒りの伝え方の基本が、なんとなく見えてくるはずです。

この書籍は、水を求めている人に水を与えるのではなく、井戸の掘り方を教えてくれるような内容です。特に、怒っていることを表現できず、抑え込んでしまってつらい、という方にお薦めです。


激昂の思い出

もう何年も前のこと。まだ、アンガーマネジメントを知らなかった頃の話です。

大手ガソリンスタンドで、5,000円の洗車カードが「今なら2,500円」というので購入しました。ところが。そのカードの有効期限は、その時点で残りわずか2週間。2回目に行った時、すでに有効期限が切れていて使えませんでした。激しい怒りがこみ上げてきました。

結局、2,500円から前回の洗車分を差し引いた額が返金されたのですが、悪びれる様子もない店長の口調に、私は尚も強く、激しい怒りに震えていました。

このエピソード、実は、私の最初のアンガーマネジメントログです。アンガーマネジメントファシリテーター養成講座で書き出したもので、点数は「8」としました。

今なら、せいぜい「3」といったところでしょうか。有効期限を確認しなかった私にも落ち度はありますし、何よりガソリンスタンド側にも何か事情があったのかもしれないと考えられるようになったからです。

世の中は、白と黒だけではない。白ではないけれど、だからと言って黒とも言い切れないもののほうが多いのです。アンガーマネジメントで、私は、ようやくそのことに気づくことができました。


それにしても長い

スーパーのレジで、前の女性が、お財布からなかなか小銭を出せずにいました。小銭を使い切りたいとか、たとえば10円玉を5枚以上残したくないとか、私のように何かこだわりがあったのかもしれません。

が、それにしても、長い。

深呼吸をして、窓の外を眺めました。綺麗な夕焼け空です。ふっと笑顔になり、視線をレジに戻すと、まだ小銭をもそもそしている。

ええっ!まだ!? いつまで待たせる気!? 一体、何を探しているのよ! 夕方は混雑していることくらい主婦ならわかるでしょ!ちょっと、ちょっと、もういい加減にしてよー!

と、心の中で叫んでしまいました。おそらく、アンガーマネジメントの6秒待つテクニックを使ったことが、怒りを増幅させたのでしょう。「せっかくアンガーマネジメントの6秒テクニックを使ったのに!」と、アンガーマネジメントに裏切られたような気持ちになったのだと思います。「6秒待ったらイライラが消えるべき」という期待があったのかもしれません。アンガーマネジメントに腹を立てるなんて。ふと、笑ってしまいそうになりました。

前の女性の清算が遅いと言っても、おそらく数十秒程度です。スーパーを出るのが数十秒遅れても、そうたいしたことはないはずですが、そこが「夕方」の「スーパーのレジ」で「両隣の列がスイスイと進んでいた」から、自分だけが足止めされているように感じ、焦りや不満からイライラが生まれたのでしょう。(怒りは第二次感情)

改めて周りを見ると、両隣も長蛇の列です。他の列に並び直すよりこのまま待つほうが得策です。どんなに長くても1分はかからないでしょう。もし1分たってもまだ会計が終わらないなら、その時はまたどうするかを考えることに決めました。(変えられるが、重要ではない/行動のコントロール)

すると、数秒過ぎたところで前の女性が探すのを諦めたのか、直後に会計が終了しました。以前なら、あからさまにイライラしているという態度を取ったり、その女性をじっと見たりしていたでしょう。そんなことをしたら、きっと後で「私はなんて感じが悪いのだろう」と自己嫌悪に陥っていたでしょう。でも、そうならずに済みました。

途中でアンガーマネジメントに怒りを覚えてしまいましたが(笑)その後、なんとかアンガーマネジメントに取り組み直すことができました。今度は、最初から上手にアンガーマネジメントできるようになると良いのですが。地道にコツコツ、これからも取り組んでいきたいと思います。


なぜ、そこに停める?

車で帰宅途中のこと。住宅街の狭い道のほぼ中央にタクシーが停車していました。降車中のようでしたが、かなり長い時間、待たされました。

「かなり長い時間」「待たされた」という表現に、私の怒りの程度が透けて見えます。実際は1分もなかったと思います。しかし、私は待っている間、こう考えてしまっていました。

なんでそこに停めるんだろう?もうちょっと端に寄せてくれれば通れるのに。そもそも、あと数メートル進めば道幅が広くなるんだから、そこまで行って停まればいいのに。タクシーなんだから、それくらい気づきそうなもんなのに、気が利かないなあ。あー、ほら、後ろから車来ちゃった。列、できちゃうよ。それにしても遅いなあ。まだかなあ。

上記、改めて読んでみると、20秒程度です。しかし、私はもっともっと長く感じました。

長く感じたのは、イライラしていたからです。目の前のタクシーに向かって、頭の中で不満をぶつけ続けていたから。20秒程度なら、何か他のことをして気を紛らわせていれば、あっという間に感じたはずです。たとえば、ラジオやテレビのチューニングをしてみたり、ナビの目的地履歴を確認してみたり、布でダッシュボードを拭いてみたり、何かすればそれほどイライラせずに済んだのではないかと思います。(衝動のコントロール)

また、怒りが強くなったのは、「タクシーなら後続の車に配慮できるはず」「後続の車に配慮して、もう少し先へ停めるべき」があったからでしょう。もっと言うと、「人に迷惑をかけるべきでない」があるのかもしれません。

しかし、よく考えてみれば、タクシーは客商売。お客様から「ここで停めて」と言われれば、停めざるを得ないのでしょう。仕方のないことです。また、初めての場所であれば、少し先へ進めば道幅が広くなることに気づけないこともあります。それも仕方のないことです。許せない、と思うほどのことでもありません。おまけに、ほんの数十秒、道を塞いだくらいで「迷惑」とは、物事を大げさに考え過ぎです。世の中はお互い様。すみませんね、で良いのです。(思考のコントロール)

アンガーマネジメントのテクニックで怒りを整理したら、私は、怒る必要のないことで無駄にイライラしていたのだということに気づくことができました。

これが、リアルタイムでできればと思うのですが、なかなか難しいものです。

でも、実はこれが何より大切。アンガーマネジメントできなかった自分を責めない。「私はできるべき」を手放す。私はできない。できないけれど、努力はしてる。そこを評価しよう。私、がんばってて偉いよ。と、自分を許してあげると、他人への許容度が上がるのです。

今回はイライラしちゃいました。でも、反省できたからよしとしよう。次、がんばろう。


怒らされているのではなく

自分を怒らせるものは一体何だと思いますか?

そう問われたら、多くの方が「特定の誰か」や「あるできごと」を思い浮かべるのではないでしょうか。「あの人はいつも私をイライラさせる」とか「あの一言がなければ、私はここまでキレなかったのに」など。

しかし、私たちを怒らせるものは「誰か」でもなければ「できごと」でもありません。私たちを怒らせているもの。それは、私たちが持つ「こうあるべき」という価値観です。信条、こだわり、と言っても良いかもしれません。

この、私たちの理想、希望、願望、欲求を象徴する言葉「べき」。社はこうあるべき、子どもはこうあるべき、上司はこうあるべき、部下はこうあるべき、父親はこうあるべき、母親はこうあるべき、女はこうあるべき、男はこうあるべき、時間は守るべき、約束は守るべき、など。この「べき」が目の前で裏切れた時、私たちは怒りを覚えます。

私は以前、狭い歩道を2列に並んでおしゃべりしながら、私の前をゆっくり歩く年配の女性にひどく腹を立てたことがありました。「なんで道を塞いでるってことに気づかないんだろう。ホント、ありえない」などと頭の中で(妄想で)相手に向かって罵詈雑言を投げつけていました。そして、苛立った声で「すいません!」と言いながら、軽く肩をぶつけて追い越していました。(怖いですよね…。)

この時の私の「べき」は、「狭い歩道を2列に並んで歩くべきでない」「道を塞ぐべきでない」「後を歩く人に配慮すべき」です。もっと言うと「人に迷惑をかけるべきでない」もありました。私が怒ったのは、これらの「べき」が裏切られたからです。

しかし、今は、同じ状況でも怒りを感じなくなりました。なぜなら「周りが見えないくらい会話が楽しいんだなあ。」と微笑ましく感じられるようになったからです。そして、通る時に「失礼しまーす。通りまーす。」とさらりと言えるようになったからです。

もちろん、「狭い歩道を2列に並んで歩くべきでない」「道を塞ぐべきでない」「前後から来る人に配慮すべき」「人に迷惑をかけるべきでない」は、変わらず持っています。ですから、私自身は、狭い歩道を2列に並んで歩くことはしません。でも、だからと言って、それをしている人を責めることはしなくなりました。その必要はない、その「べき」は妥協できる、と気づいたからです。

妥協できないのは、行く手を阻まれること。私は、その先へ進みたかった。彼女たちを追い越して、その先へ進みたかった。それは絶対に妥協できないので、「通ります(だから避けてください)」とリクエストをしたのです。怒らなくても、肩をぶつけなくても、自分の思い通りに状況を変えることはできる。それがアンガーマネジメントです。

私たちは、つい、怒らされていると思ってしまいます。「あの人のせいで」「ああいうことをされたせいで」と。でも、それは違います。怒らされているのではありません。自分の「べき」が、自分を怒らせている。つまり、自分が「怒る」ということを選択しているのです。

怒らされている=他人や状況に支配されている人生、です。アンガーマネジメントは、怒りに人生を支配されない、自分で怒ると決めて怒ることをめざします。

と、ここで、「ふざけんなよ。どう考えたって、道を塞ぐヤツが悪いに決まってるだろう。なんで、そんな気遣いもできないヤツを微笑ましく思わなきゃいけないんだ。そういう人に迷惑をかけるようなヤツは、きっちり迷惑だと教えてやらなきゃダメだろう。アンガーマネジメントなんかやったら、世の中、迷惑をかける無責任なヤツばかりになるぞ。怒ることも必要じゃないのか!」と、今、お怒りの方もいらっしゃると思います。

良いのです。怒っても。アンガーマネジメントは、怒るな、とは言っていません。間違いだ。そう思うなら、そう言っても構いません。

ただ、それをやって、相手からひどい返り討ちに合う可能性もあります。あるいは、大事な取引先の社員だったとか、ご近所で家族が何かとお世話になっている方だった、ということもあるかもしれません。その様子を誰かに見られていて、ひそかに避けられたり、何かのチャンスを逃すこともあるでしょう。そうでなかったとしても、後になって、あんなに怒らなければ良かったと後悔したり、自己嫌悪に陥ることがあるかもしれません。

もし、そうはなりたくないな、と思ったらアンガーマネジメントに取り組んでください。何か、人生がうまくいかない。そう思ったら、自分の「べき」を見直してみてください。

きっと何かが変わるはずです。良い方向に。


怒ることに罪悪感を覚える理由

怒ることに罪悪感をもつ人は少なくありません。「こんな小さなことで怒るなんて、本当に恥ずかしいんですけど」と、アンガーマネジメント入門講座でも、受講者様からよくお聞きします。

怒りは人間にとって自然な感情ですから、怒ることは悪いことではないのに、なぜ私たちは怒ることに罪悪感をもってしまうのでしょう。理由は2つあります。

まず、「怒るんじゃないの!」「怒っちゃダメでしょ!」など、家庭の中で、怒ってはいけないと躾けられてきたから。次に、怒って後悔したり、怒って悪い結果につながった失敗体験。怒らずにいたことで褒められたり、怒りを抑えたことで良い結果につながった成功体験。これらの積み重ねにより、私たちは無意識のうちに「怒ることは悪いこと」と思い込んでしまっているのです。

でも、怒りは人間にとって自然な感情です。また、身を守るために必要な感情でもあります。ですから、怒りを感じることは悪いことではありません。怒っても良いのです。

大切なことは、「怒る必要のあること」と「怒る必要のないこと」の線引きをして、後悔しない怒り方をすること。怒りの感情を、上手に表現することです。

アンガーマネジメントは、怒りを我慢するものでも、抑えるものでもありません。怒っていることを上手に表現することなのです。


怒りの感情を正確に表現する

ムカつく、キレる、イライラする…普段、怒ったときに言う言葉は色々あると思いますが、怒りに関する表現は何種類くらい言えるでしょうか?いざ問われると、案外と出てこないのではないでしょうか。

怒りを表す言葉として、たとえば、苛立つ、頭にくる、腹が立つ、腹に据えかねる、堪忍袋の緒が切れる、いきり立つ、怒髪天を突く、青筋を立てる、激怒、激高、憤怒…など、怒りの強さに応じて、様々な表現があります。

しかし、私たちは日頃、「ムカつく」、それより強い怒りを「キレる」といったように、ごく限られた言葉で表現していることが多いのではないでしょうか。これでは、怒りの感情を正確に表現できているとは言えませんね。

「自分の怒りの感情を正確に表現できない」ということは、「相手に、自分の怒りを正確に伝えることができない」ということでもあります。怒りの感情を正確に表現できないと、怒っているか否かのどちらかになりやすいので、一度怒ると、怒りが一気に強くなる傾向があります。

また、怒りの感情を言葉で表現できないと、「怒鳴る」「机を叩く」など、行動で表現するようになります。

さらに、「キレる」と表現すると、実際にキレやすくなります。行動は、言葉に引きずられる傾向があるからです。

怒りの感情には幅があります。「ムカつく」と「キレる」の間には、もっと多くの表現(怒りの強さを表す言葉)があるのです。それを理解して、怒りのボキャブラリーを増やしていきましょう。


6秒待つためのテクニック – 2つめ

怒りの感情のピークは、長くて6秒です。この6秒をうまくやり過ごすことで「ついカッとなって」を防ぐことができます。今回は、6秒待つためのテクニックの2つめをご紹介します。それは、コーピングマントラです。コーピングは切り抜ける、マントラは言葉、呪文という意味です。

いつも自分だけ残業を押しつけられる。満員電車で足を踏まれたのに知らん顔された。など、理不尽なできごとにイライラしてしまいそうになることがありますよね。そんな時、自分に向かって「魔法の言葉」をつぶやくと、怒りの加速にブレーキをかけることができます。

魔法の言葉は、自分の気持ちが落ち着く言葉であれば、何でもOK。「ドンマイ、ドンマイ」とか、大好きな人やペットの名前でもかまいません。私のコーピングマントラは「ま、いっか」です。

あらかじめ「魔法の呪文」を決めておいて、イラッとしたときに、人には聞こえない程度につぶやいてみてください。


6秒待つためのテクニック – 1つめ

6秒待つためにできることは色々あるのですが、今日は2つご紹介します。覚えましょう。たくさんの種類を覚えるよりも、2つをしっかりとできるようになりましょう。2つでも十分にパワフルです。

1 – スケールテクニック
イライラ、怒りの温度をはかるテクニックです。怒りの温度とは、怒りの強さのこと。どれくらいの強さで怒っているのかを自分なりの尺度で測ります。

実は、怒りの感情をうまくコントロールできない理由の1つに、「怒りという感情について尺度を持ったことがないから」があります。私たちは何かを理解するときに尺度を使います。たとえば、暑さや寒さだったら気温、体調が悪かったら体温、血圧、というように。私たちは尺度を使って、ものごとの大きさ、量を実感することに慣れています。

ところが、怒りの感情は、これまで測ったことがありません。今、怒っていることと、この前怒ったことと、どちらがどの程度強いのか、それがよくわかっていません。わからないから、必要以上に強く怒ったり、逆に怒らなかったりしてしまうのです。

怒りの温度は、気温と違って絶対値がありません。あくまでも相対的で構いません。「0」を穏やかな状態、「10」を人生最大の怒りとして、自分なりに点数をつけてみましょう。

たとえば、列に並んでいて割り込まれた。これは何点でしょうか?部下が何度も同じミスを繰り返す。これは何点になりますか?もしできれば、最近イライラしたこと、怒ったことを書き出して、点数をつけてみてください。そして、それをまずは1週間、続けてみてください。

最初のうちは、点数は比較的高くなりがちですが、やがて、「これが5点だと、あの8点はおかしいな」など、綺麗に点数を並べられるようになります。同時に、点数も比較的小さくなっていきます。

このテクニックは、続けることに意味があります。まずは3日、それができたら1週間、2週間と、ぜひ続けてみてください。自分がどのようなことに、どの程度の強さで怒るのか、自分の怒りの傾向が見えてきます。


怒った時にしてはいけないこと

怒った時に、絶対にしてはいけないことが、たった1つだけあります。 それは「反射」です。反射的に「何かを言う」「何かをする」「言い返す」「やり返す」など。つまり、売り言葉に買い言葉、のようなものです。

たとえば、子どもが宿題もやらずにゲームをしているのを見た時、ついカッとなって「いいかげんにしなさい!」と怒鳴ってしまったことはないでしょうか。そこで子どもが「うるさいなぁ、良いところなのに」などと言い返してこようものなら、「何言ってるの!!まったくいつになったら…!(以下、省略)」などとさらに怒りは強くなり、倍返し、3倍返し、してしまうこともあるのではないでしょうか。

怒る側にとっても、怒られる側にとっても、反射は望ましい結果を生みません。それがわかっているのにやってしまう。そこで、6秒待つというルールをつくってみましょう。

諸説ありますが、一般的に、怒りの感情のピークは長くて6秒と言われています。ですから、カッとなっても6秒待つことができれば、より良い選択ができる可能性が高まります。ひとまず6秒間は「余計なことは言わない、しない」ことを心がけて、最悪の事態を防ぎましょう。

とは言え、怒っている時の6秒はとても長く感じるものです。アンガーマネジメントでは、6秒を無理なく待つためのテクニックがいくつかあります。次回以降、そのテクニックをいくつかご紹介いたします。


怒りの下にあるもの

氷山

怒りは、単体で存在しているわけではありません。

怒りは、水面の【上】に見えている「氷山」のようなもの。水面の【下】に「ネガティブな感情(不安、つらい、苦しい、悲しい、寂しい、嫌だ、など)」が隠されています。これを第一次感情といいます。怒りは、第二次感情。第二次感情は、第一次感情があって初めて生まれてくる感情です。

私は以前、息子が忘れ物をすると、頭ごなしに「なんで忘れたの!」とひどく怒っていました。このままでは息子が将来、人様にご迷惑をおかけるような大人になってしまうのではないか、と「心配」だったのです。

この「心配」という本当の気持ちに気づいてからは、息子が忘れ物をしても、落ち着いて自分の気持ちを伝えたり、「なんで」と責める代わりに、「どうしたら」と未来志向で息子と話し合うことができるようになりました。

怒りの下には、ネガティブな感情が隠されています。怒りを感じたら、ぜひ第一次感情に注目してみてください。


どんな怒り方をしている?

怒りをコントロールする上で必要なこと。それは、自分の怒り方を客観的に見つめ直すことです。

怒りは強いほうですか?(強度)
思い出し怒りはしますか?(持続性)
しょっちゅうイライラしますか?(頻度)
他人や自分を責めたり、物に当たることはありますか?(攻撃性)

まず最初に、自分の「怒りの現し方」を上記4項目に照らし合わせて、10点満点で点数をつけてみましょう。自己診断なので、自分なりのイメージで構いません。

次に、「なぜそう思うのか?」を考えてみましょう。この作業は、自分自身の怒りを知る上でとても重要です。

また、身近な人についても、4項目について点数をつけてみると良いでしょう。自分の点数と比べることで、自分の怒りの傾向がより明確になります。

傾向がわかるとアンガーマネジメントにも取り組みやすくなります。もっと正確に診断したい場合は、アンガーマネジメント診断を受験しても良いでしょう。


問題のある怒り方4つ

怒りは、人間にとってごく自然な感情ですから、怒ることそれ自体は悪いことではありませんが、次の4つにあてはまる場合は問題です。

1.強度が高い
一度火がつくと止まらなくなってしまう怒り方です。 相手が謝っているのに自分がすっかり怒り切るまで怒るのをやめない、など。

2.頻度が高い
一日中、どこにても、誰といても、しょっちゅうイライラしたり、カチンときたり。

3.持続性がある
過去にあったことをいつまでも引きずったり、思い出し怒りをしたり。

4.攻撃性がある
暴力や暴言、無視をしたり、投げやりになったり、自分を責めたり、物に当たる、など。

どれも怒りを上手に表現しているとは言えませんね。このような怒り方は、後悔や罪悪感につながります。アンガーマネジメントができるようになるためには、自分はどのような怒り方をしているのか、まず自己認識することが大切です。


怒りは何のためにあるのか?

怒りは何のためにあるのか? そもそも怒りとはどのような感情なのか?

改めて問われると、ふと考え込んでしまいますね。誰もが知っている怒りですが、いざ説明となると難しい。それには理由があります。これまで怒りについて学んだこと、教わったことがないからです。

怒りは、人間にとって、ごく自然な感情の一つです。怒りの感情がない人はいないし、なくすこともできません。

一見、穏やかそうに見える人にも怒りの感情はあります。一般的に穏やかな人は怒る頻度が低く、仮に怒っても怒り方が強くはありません。滅多に怒らず怒鳴ったりもしないので、穏やかに見えるのです。また、自分が怒っていることに気づいていない人もいます。アンガーマネジメント研修を受けて初めて自分の怒りっぽさに気づいた、という人も少なくありません。

怒ることは悪いこと、というイメージがありますが、感情に良いも悪いもありません。ただ、怒ることに罪悪感を持ったり、躾のなかで怒ることは恥ずかしいことだと教えられてきた人が多いのは事実です。また、怒って後悔した経験の積み重ねから、怒ることは良くないと思う人もいるでしょう。

しかし、怒りは人間にとって自然な感情です。怒りの感情がない人はいないし、なくすこともできません。

なぜなら、怒りは、身を守るための感情、防衛感情だからです。

私たち人間を含むすべての動物は、自分の身に危険が迫った時、[自己防衛のため]とっさに闘うか逃げるかを選択します。これを「闘争・逃走反応」または「急性ストレス反応」と言います。この時、発汗や血圧の上昇、呼吸数や心拍数の上昇などと共に、怒りの感情が生まれます。この身体や心の反応には、脳の側頭葉前方にある扁桃体と呼ばれる部位が関係していることがわかっています。ですから、この部位を事故で損傷したり手術で切除したりしない限り、怒りの感情をなくすことはできないのです。

繰り返しになりますが、怒りは、人間にとって自然な感情です。怒りの感情がない人はいないし、なくすこともできません。怒ることは悪いことではありません。怒りは感じても良いのです。


入門講座で学べる3つのこと

アンガーマネジメント入門講座では、アンガーマネジメントの基本テクニックを3つの暗号でご紹介しています。

その3つとは、
 1.とっさの怒りの対処法
 2.「怒る必要のあること」と「怒る必要のないこと」の線引きをする方法
 3.怒りで後悔しないための具体的なアクションを選択する方法
です。イラッとした時、この3つを思い出して実践できれば、イライラや怒りの感情と上手に付き合えるようになります。基本テクニックとは言え、非常にパワフルです。

アンガーマネジメント入門講座は90分です。講師の話を聴くだけではなく、受講者自身の事例を掘り下げるようにして進めていきます。もしかすると、その90分で人生が変わるような気づきを得られるかもしれません。

もし興味がありましたら、ぜひアンガーマネジメント入門講座を受けてみてください。日本全国にアンガーマネジメントファシリテーターがいます。いつでもどこでも受講可能と言っても過言ではありません。

日本アンガーマネジメント協会|講座情報
https://www.angermanagement.co.jp/seminar

もしよろしかったら、ぜひ一度、聴いてみてください。


アンガーマネジメントの目的

アンガーマネジメントは、怒らなくなることが目的ではありません。怒る必要のあることは上手に怒れて、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることです。

私たちはとかく、「怒っておけば良かった」「怒らなければ良かった」と後悔することがあります。怒った後で後悔したのなら、それは、本当は怒る必要がなかったということ。 逆に、怒っておけば良かったと後悔したのなら、それは本当は怒る必要があったということ。アンガーマネジメントができるようになると、怒る必要のあること、怒る必要のないことの線引きができるようになり、怒りで後悔しなくなります。

ごく稀に、アンガーマネジメントを「怒らないこと」「怒らない人になること」と誤解されている方がいらっしゃいますが、アンガーマネジメントは怒らないことではありません。繰り返しになりますが、 怒る必要のあることは上手に怒れて、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになること。それが、アンガーマネジメントです。